


Atmo Decorは、2018年にタイで創業したフラワーインテリアブランドです。「Timeless Blooms(色あせない花)」を掲げ、本物と見まがうほど精巧なアーティフィシャルフラワーを、デザイン性の高い花器と組み合わせたアレンジメントを手がけています。チューリップやバラ、芍薬などのアレンジはプレミアムな価格帯で、一部の商品は色味のカスタマイズにも対応。バンコクの商業施設EmQuartierにも店舗を構え、住まいを彩りたい個人のお客様から、オフィスや店舗を演出したい法人のお客様まで支持を集めています。 高価格帯の商品だからこそ、お客様は写真やレビューをじっくり見比べ、納得してから購入を決めます。Atmo DecorにとってLINE公式アカウントは、商品やインテリアのアイデアを届け、相談に応え、購入へと導くいちばん大切な接点です。FacebookやInstagram、店頭でもブランドに触れたお客様を、最終的にLINEで迎え入れ、関係を深めています。

Atmo Decorの商品には確かな需要がありました。それでも、お客様がどこから来て、何に関心を持ち、何をきっかけに購入したのかを示すデータがなく、マーケティングは手探りの状態でした。課題は大きく3つです。
これは日本のEC・D2Cブランドにもよくある悩みです。Meta広告やInstagramの投稿からLINEの友だちを集めても、どの広告が売上につながったのかがわからない。結果として広告予算の配分も、配信内容も、経験と勘に頼りがちになります。

Atmo DecorはFacebookなどで広告やコンテンツを発信していましたが、お客様が「どの広告」「どの投稿」「どのプラットフォーム」から来たのかを、体系的に追う仕組みがありませんでした。どのキャンペーンが実際の売上を生んだのか、どのチャネルに予算を増やすべきかを判断できず、マーケティングの意思決定はデータに基づく最適化より、試行錯誤に近いものでした。
主要な接点であるLINE公式アカウントでも、お客様の行動や関心のデータを継続的に蓄積できていませんでした。そのためセグメントを分けたり、一人ひとりに合わせたメッセージを設計したりできず、全員に同じ内容を送る一斉配信が続いていました。理解と体験の積み重ねで購入が決まるプレミアム商材にとって、これは大きな機会損失です。
手元にある顧客データも、チャネルごとにばらばらで、カスタマージャーニー全体を分析できる状態ではありませんでした。キャンペーンは毎回単発で、前回の学びを次に活かせない。データドリブンなマーケティングと、ブランドの持続的な成長にとっての壁になっていました。
こうした課題が、Atmo DecorがCRMとマーケティングオートメーションの導入を検討するきっかけになりました。
いちばん印象に残っているのは、Crescendo Labは多くのお客様を抱えている会社なのに、私たちのことをとても大切にしてくれることです。使い方のサポートや何度ものトレーニング、マーケティング面での支援まで、手厚く助けてもらっています。
Atmo Decorが導入したのは、Crescendo LabのAIマーケティングプラットフォーム「MAAC」です。流入経路の計測、行動データの蓄積、セグメント配信の3つを組み合わせ、手探りだったマーケティングを、データで判断できる仕組みに変えていきました。
最初に効果が表れたのが、流入経路リンク(Deeplink)です。広告や投稿にリンクを付けると、クリックのたびに「どの商品」「どのプラットフォーム」「どのキャンペーン」から来たのかが記録されます。
「お客様がどのチャネルから来て、どのチャネルの成果が一番いいのか、どこで購入が決まったのかまで追えるようになりました。成果の出ているところに予算を足せるので、広告費をずっと効率よく配分できています」と同社は話します。
たとえばFacebookのキャンペーンでは、投稿に流入経路リンクを付け、LINEで使える割引クーポンを用意しました。Facebookの広告から友だち追加したお客様は自動で識別され、その人たちだけにLINEで特別なクーポンが届きます。お客様にとってはプラットフォームをまたいでも「自分向け」と感じられる体験になり、チームはどの広告が実際の購入につながったのかを確かめられます。Facebook経由で獲得したLINEの友だちは1,300人を超えました。

MAACのダイナミックリッチメニューで、Atmo DecorのLINE公式アカウントはインテリアブランドの「ミニWebサイト」になりました。お客様はフォトギャラリー、レビュー、ブランドページ、店舗への道順まで、LINEの中で複数のページを行き来しながら探せます。
「何ページも行き来できて、LINEの中のミニWebサイトのようです。お客様が知りたい情報を一か所で探せるので、とても便利です」
さらに、メニューのクリックはすべて自動でタグとして記録されます。どの商品に関心があるのか、どのコンテンツを見たのか。こうした行動データが、セグメント分けとキャンペーン設計の土台になりました。

データがそろったことで、Atmo Decorは実際の行動や関心にもとづいてお客様を分けられるようになりました。全員への一斉配信から、商品に関心を持ちそうな人に絞った配信へ。開封率は約34%から約70%へ、およそ2倍に伸びました。
「関心があって商品を見に来たことのあるお客様に、もう一度届ける。毎回全員に送る必要がないので、その商品に関心のないお客様からブロックされる可能性も減らせます」
メッセージを開いた人・開いていない人も把握できるため、次に誰へ送るかをより正確に選べます。購入の機会を広げながら、関係のない人への配信を減らし、ブロックのリスクも抑える。配信の効率が上がりました。

顧客データが体系的に蓄積されたことで、Atmo Decorは自動タグ付けと、行動・関心・カスタマージャーニー上の段階にもとづくセグメントを使いこなせるようになりました。
たとえばリピート購入を促すキャンペーンでは、「バラの花器を購入済み」といったタグをもとに、以前買った商品に近い新商品を案内しています。お客様の関心をとらえ、エンゲージメントが目に見えて高まりました。開封率、クーポンの利用率、キャンペーンごとの売上など複数の指標で成果を追えるようになり、セグメントを分けない従来の配信と比べて、メッセージのROIは大きく向上しています。
マーケティングの成果に加えて、チームの働き方も変わりました。以前は、お客様がどのセグメントにいるかを手作業で確認していて、1回に10分ほどかかることもありました。マーケティングオートメーションの導入後は約1分に。作業時間は約90%削減され、空いた時間をお客様への対応に充てられるようになりました。

Atmo Decorには、もうひとつ大きな転機がありました。LINE公式アカウントが第三者に不正にアクセスされ、2万6,000人を超える友だちを失ったのです。Jesada氏によると、以前ブランドを利用したインフルエンサーになりすました人物から連絡があり、信頼させたうえで安全でないリンクを開かせたことがきっかけでした。乗っ取られたアカウントでは登録情報が書き換えられ、ギャンブルサイトに関する内容が一斉配信されるなど、お客様の信頼を大きく揺るがす事態になりました。
日本でも2024年に、LINEヤフーがLINEビジネスIDへの不正ログインと、それにともなうLINE公式アカウントの不正操作を公表しています。アカウントの乗っ取りは、どの国の企業にとっても他人事ではありません。
警察への届け出やLINE社への問い合わせを続けても、元のアカウントは取り戻せませんでした。それでもAtmo Decorは、LINEを主軸にし続けると決め、新しいLINE公式アカウントを立ち上げます。LINEで友だち追加するお客様は他のチャネルより購入意欲が高く、最も購入につながりやすいチャネルだからです。移行期間はFacebookやInstagramで状況を丁寧に伝えて安心してもらい、お客様を少しずつ新しいアカウントへ迎え入れていきました。
この経験から、Atmo Decorはアクセス権限の管理と、顧客データを体系的に扱う仕組みの大切さを強く意識するようになりました。MAACは単なるマーケティングツールにとどまらず、顧客データを一元化し、変化の時期にもお客様との関係を続けるための基盤になっています。現在は、SNSや店頭などあらゆる接点から新しいアカウントの友だちを増やしながら、新しいお客様にコンテンツや特典、先行案内を届けています。
CRMが本当にマーケティングの効率を上げるのか迷っている企業には、こう伝えたいです。良いツールは作業を速くするだけではありません。データが整理され、お客様により的確に届けられ、重複する作業も減ります。お客様が増えるほど、良い仕組みがあることでチームは働きやすくなり、成果も測りやすくなり、売上も伸ばしやすくなります。





